コロナ・ウイルス病禍の拡大は今や地球規模での危機的状況を迎えており、感染拡大防止の為に講じらた諸対策により致し方なくとは申せ世界の経済・文化活動は停滞し、それは今や人々の日々の生活の糧・手段を脅かすまでに至ってしまいました。

日本バレエ協会ではバレエ関係者、殊に会員の皆様の現在の置かれた状況を調査すべく本ホームページ他の手段でアンケートを実施、３月末までに約百五十件もの悲痛なお声をお寄せいただきました。

その結果、芸能・スポーツ分野での各種コンサートや試合の延期・中止はマスコミでも大々的に取り上げられ、そこで生じた経済的損失等につきましては世間の注目を集めておりますが、バレエや現代舞踊、社交ダンスといった分野に携わる者の日々の生活を支えいるのは実は公演やイベントではなく自営・嘱託を含めての教授業と教室主宰者主催の舞台への依頼出演であり、この分野に携わる者がコロナ・ウイルス防疫の直撃を受けて人によっては生活に困窮するほどの窮地に追い込まれている事に殆ど社会の耳目が集まっていないことに大きな危機感を抱きました。バレエの稽古場を一か月休業する事で生じる損失はわが国全体で優に２０億円を超えると試算されます。

日本バレエ協会ではこうしたバレエ界の実情をお伝えすると同時に、バレエに携わる殆どの者が所謂フリーランス（個人事業者）であり多くの場合慣習的な契約で書面取り交しが無いまま役務に従事している立場をご理解頂き、公的救済の対象から除外されてしまう様な事が無い様にとのお願いを認めた要望書を４月３日、衆議院議員会館にお届け致しました。

コロナ・ウイルス防疫に伴い生じたバレエ界の現状並びに要望＜主文＞

　コロナ・ウイルス病禍の現状は改めて申し上げるまでもなく危機的状況に立ち入っており、またその感染拡大防止の為に講じられております諸対策により致し方なく生じた各分野に於ける経済的停滞・損失の大きさにつきましても既に周知認識され、対策や補償が講じられつつございます。

芸能・スポーツ分野で申し上げますれば、オリンピックは言うまでもなく各種舞台公演やイベント、試合等の延期・中止はマスコミでも大々的に取り上げられ、そこに生じた経済的損失の実態、並びにその金額等につきましては世間の注目を集め、概ねその救済処置が公的に検討されつつある様に見受けられますものの、バレエや現代舞踊、社交ダンスといった分野に於きましては、そこに従事しております者達の日々の生活を主に支えておりますのは、実は舞台公演やイベントではなく、自営・嘱託を含めての教授業や生徒発表会への依頼出演なのであります。

バレエに限って申し上げれば、私共公益社団法人日本バレエ協会は全国に約2,300名の会員を擁しておりますが、それら会員が指導する生徒ならびにその親族関係者を含めますと概ね四十万人近くがこの舞台芸術に親しんでいると推定されます。

そして不幸にして、バレエ教授の場は寒さ未だ収まらぬこの３月にあって身体コンディション維持の為に高温多湿の音響上密閉された空間で、他者との身体的接触も多く、また個人指導を旨とする音楽指導とは異なり集団に対する教授が一般的でありますので、正に感染を最も警戒せねばならぬ環境でございます。

その為、殆どのバレエ稽古場がこの３月は休業状態にあり、恐らくは４月になってもこの状況は延長されるものと思われ、置かれている窮状は指導の点でも収入面でもかつて類を見ない状態にございます。

殊にこの状況がバレエ関係者を不安に駆り立てておりますのは、こうした教授業や発表会出演に従事する者の多くが所謂フリーランス（個人事業主）であり、その役務に関しては依頼主との間に雇用契約が締結されている場合が希であるという実態がございます。

よしんば公的機関によるフリーランス救済処置が施行されても、今回事案で職を失っている証明が困難で、救済対象から除外されてしまうのではという不安は、現状フリーランスに共通した最大の危惧であります。

つきましてはこうしたケースの対策と致しまして、当協会の様な公益法人が発行する失職証明が、本件事態の収束までの期間のみでも構いませんので有効な証憑として対策窓口で通用する特例処置を是非検討して頂きたい、という請願をさせて頂きます。

無論、当協会がその様な職責を負いました場合には、厳正な調査裏付けの上に発行を行う所存でございますが、こうしたフリーランス層はわが国バレエ芸術の基幹部を支えるのに必要不可欠な存在であり、わが国バレエ芸術の灯を消さないためにも是非前向きにご検討頂けましたら幸甚に存じ上げます。

尚、バレエ界に発生しております経済的打撃の実態と損失の試算資料、それに実際の現場の声を添えさせて頂きますのでご参照頂ければ幸いです。